FP-21T Precision 導入事例

ベオグラード大学におけるMITS FP-21T Precision 加工機の利用

導入の経緯

FP21T Precisionはセルビアの科学技術開発省の助成金により購入されました。
この助成金は、電子工学部の電磁気、アンテナおよびマイクロウェーブのグループに与えられたものです。
同グループはほぼ半世紀にわたり、理論的研究、数値計算技術および技術開発に関する世界的なリーダーのひとつでした。
グループ内には10名の専任教師陣がおり、学士、修士および博士レベルの教育を行っています。
この3つ全てのレベルにおいて、マイクロウェーブ技術専門のカリキュラムがあり、授業登録をしている学生はおよそ120名(電子工学部の全学生3000人のうち)います。

科学技術開発省の規定により、セルビアのすべての研究教育機関はこの装置を利用することができます。
特にマイクロウェーブおよびミリメータ波の領域の装置の設計製造に係わるベオグラード・マイクロウェーブ学会のスタッフに大いに活用されることを期待しています。

この装置を使い始めるにあたり、2008年10月にMITSによるトレーニングが行われました。
その後、数週間にわたる自習期間を設けました。その結果、今では我々は微妙なパターンの作成にも自信を持っています。

また、MITSからのすばらしいサポートについても強調しなければなりません。
MITSのスタッフは常に支援をする体制をとり、我々のどんな質問にも答えてくれ、必要な点についてはすみやかにソフトウェアやマニュアルを改善してくれています。

FP-21T Precision

FP-21T Precisionで0.1mm以下を実現

FP21T Precisionは、我々のグループの教育および研究活動の双方において重要な役割を果たしています。この装置によりマイクロウェーブ、特にミリ波の装置の設計を、すばやく実験を行い確認することができます。
多くの場合、加工する基板はテフロン積層板、Rogers 4003 あるいは類似する基板です。
ある種の高周波回路(例えばフィルター等)は、マイクロストリップの配線の間に非常に狭いギャップを設ける必要があります。

FP21T Precisionを購入する前は我々はエッチングでプリント基板を作成していました。
エッチング技術により可能な標準的な分解能は 0.2mmです。

特別な注意をはらって手作業した場合、分解能を 0.1mm近くまで追い込むことはできますが、その場合の歩留まりは低いです。

しかしFP-21T Precisionにより 0.1mm以下の分解能をもって簡単に製造することができました。
我々は 0.05mmの分解能をもつパターンの加工に成功し、さらにこの限界を推し進める可能性を研究しています。

FP-21T Precisionを活用し、我々が習得した新しい技術により、エッチングで製造した場合に比べ、さらに広いバンド幅を持つフィルターを製造できるようになり、またミリ波帯の装置の製造も可能になりました。
我々はまだ3ヶ月しかこの装置を使用していませんが、すでにいくつかの広帯域幅結合共振器フィルターを作ることができました。

製造品質の飛躍的向上に加え、開発期間の短縮も

マイクロウェーブのプリント回路基板の製造品質が飛躍的に向上したことに加え、研究室におけるプロトタイプ開発にとって欠かせない迅速な処理時間を得ることも実現できました。
プリント回路基板を外注する代わりに、いまではたとえ夜間や週末でも試作基板を迅速に作れます。このことは、教師陣と博士課程の学生双方の研究活動にとって、非常に重要なことです。

最適な工具でシャープなエッジ

加工プロセスについては注意深く行わなければなりません。
マイクロウェーブ用ミリング工具は垂直な金属壁を得るのに非常に有用なだけでなく、導電体(ストリップ、配線など)とギャップの幅の正確な制御にも役立ちます。
インクリメンタル加工の方法は、滑らかな導体のエッジを得るときに役立ちます。
円錐型の工具を使った場合、導体の側壁は傾斜しますが、エッジは鋭くかつ滑らかです。
しかし必要なレベルのパターン精度を維持するには工具の加工深さを良く制御する必要があります。

大面積の銅面を残したまま、マイクロ波回路設計を実現

加工機を効率的な試作基板作成のために用いるほかに、この装置の機械加工能力は、我々が機械加工したマイクロ波回路の精密なモデルを得ることをを目的とした研究活動や、大面積の銅面を(剥ぎ取り加工することなく)そのまま残しておくことで、かかる時間を削減するといった研究に取り組む動機付けになりました。
後者に述べた大面積の銅面は、マイクロ波の回路とあわさり二重の影響をおよぼします。
最初の影響は高周波数帯域にわたる回路の特性インピーダンスが変わってしまうということです。
第二の影響は、銅面の寄生共振により引き起こされるものです。
我々の研究では、まずコンピュータによるシミュレーションを行い、それに続いて実験による検証を行いますが、その結果この2つの影響を完全に制御するのに十分な情報を得られました。
これにより我々は回路の性能に影響を与えずに大面積の銅面を残したまま、マイクロ波回路を設計することができるようになりました。

結論として、FP-21T Precision導入は、教育、研究そして設計活動の各分野で大きな手助けとなり、重大な技術レベルの向上を我々にもたらしました。

Professor Dr. Antonije Djordjevic
University of Belgrade
School of Electrical Engineering
Serbia

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